コロナ禍など複数の要因で厳しい業績だった店舗の立て直しを任され、「売上3倍」という敏腕ぶりを発揮された黒川さん。現在は代表として『Club BARON REX(バロンレックス)』『Club VEGA(ヴェガ)』の立ち上げ段階から参画し、常にトップクラスの売上を誇る店舗運営に注力されています。今回はそんな黒川さんに、店舗再生の裏側や繁盛店を運営する手法、大切にされている想いなどを伺いました。
最初は腰かけの予定も、やりがいを感じ社員に。
──カイザーグループに入社されたきっかけを教えてください。
大手メーカーに勤務していたのですが、「一度、思いっきり稼げる仕事をしてみたい!」と思い立ち、ある企業に転職。ところが、想像を絶するようなブラックだったため、2週間で退職しました。次の仕事を探していたところ、バーを経営する知人から「ちょうど良い仕事があるよ」と言われて面接に行ったのが当社でした。実は最初、キャバクラに対して偏見を持っており、「どんな仕事もやってみないとわからない」「恩義ある知人の紹介だから」と飛び込む決心をしたものの、「2~3ヶ月で辞めよう」と思いながらアルバイトとして黒服をスタートしたんです。
それが約10年前で、当時は今のようなホワイトな職場でなかったこともあり、苦労もしました。しかし、「普段は関わることのないお客様と接することができる」といった面白さや、毎日のように波乱万丈なイベントが起こってはそれに対応するという、刺激的な日々にやりがいを感じるようになったんです。また、リスクと表裏一体ではあるものの、自分の言葉1つで数百万円のお金が動くというスリリングさにも、手応えを感じました。そこで「社員になりたい」と手を挙げることにしたのです。
──社員から代表になるまで、どのような経緯で昇進されたのでしょうか?
業績が悪化していた店舗を、アルバイトで黒服をしているときに「副店長」の肩書きを任せていただき、立て直すことに成功しました。次に社員登用後、先程の店舗より売上が悪かったところを「改革して欲しい」とオファーを受けました。しかし、直後にコロナ禍が襲ってきたことから、複数の店舗が再編成されるという事態に。その店長を担当することになり、相当厳しい状況下でしたが、「売上3倍」を達成することができました。その功労を認めてくれたのだと思うのですが、2つの新店舗の代表としてローンチのフェーズから参画させてもらっています。
業績3倍の裏側は、実は根性論でした。
──売上を3倍にまで伸ばした、「秘訣」をお聞かせください。
それはスマートな話ではなく「根性論」でしたね。もともと深刻な事態に陥っている店舗に加えてのコロナ禍だったので、会社から「失敗した場合は、解散という経営判断をせざるを得ない」と告げられていたのです。まさに背水の陣でしたが、まずは「ホステスさんが集まり、定着する環境づくり」を目標に掲げ、当時アルバイトで黒服をしてくれていたメンバーと二人三脚で試行錯誤しながら、行動していました。ちなみにその部下は今、店長として1店舗を担うまでに成長しています。
具体的には給与システムの改良といったハード面はもちろんのこと、ホステスの帰属意識を高めるために、時間があるときはきめ細やかにコミュニケーションをとるといった、ソフト面にも気を配っていました。さらにお店の顔になる「フロント」やお客様に最高のおもてなしを提供するキーとなる「使命係」といったスタッフの育成に努めることで、飛び込みで来店したお客様に満足していただけるサービスを提供。すると、「居心地がいいお店だね」と常連客になってくださるというグッドスパイラルが生まれ、店舗のブランドイメージと評判が向上し、売上につながっていったのです。
──代表として、どのようなマネジメントをされていますか?また、ご苦労やそれを乗り越えたエピソードを教えてください。
店舗の大きさにより、マネジメント手法は違います。立て直したお店は小規模だったので、自分も動きながら、プレイングマネージャーとして指揮をとっていました。今は超大箱のため、役割分担と組織化を進めています。私がマネジメントするのは上層部で、数値目標を設定。仮に達成できないときには原因を探り、「どこが課題か?」をすぐに把握できる仕組みづくりを徹底しています。
苦労と、それを乗り越えた話でいうと、業績の波が挙げられますね。業績不振が続く店舗の運営経験もあるので、「最初のブランディングの大切さ」は身に沁みています。そこでまず、スタートダッシュで突き抜けるため、開店当初にたたみかけて戦略を走らせたところ凄い実績を記録しました。しかし、そこから2ヶ月ほど低迷した時期があります。そこで辞めていく方もいたのですが、引き止めることをせずに、むしろ採用要件を引き上げて人材を募集したのです。すると、より筋肉質な組織になり、引き締まりました。今はその精鋭部隊で営業しています。
「身内になってくれるスタッフ」の育成に力を注ぐ。
──働き始めた頃と現在では、業界全体やカイザーグループでどのような変化がありましたか?
業界全体でいうと、世の中のコンプライアンスが厳しくなり、昔のように店舗にストレスを与えるようなお客様をあまり見かけなくなりました。そのことが、ホステスやスタッフの負担軽減につながり、現在の働きやすい環境につながっていると感じます。カイザーグループとしては、入社当時はクセが強い上司たちが存在し、ときには理不尽な怒られ方をしたこともありました。それに耐え抜けたのは、2週間で辞めたブラック企業で鍛えられたおかげです。さらに、グループ全体が「クリーンな社風を目指し、ビジネスの本質を追求」していくなかで自浄作用が働き、環境が変わっていったのも大きかったと感じます。
──大きな変革の中、黒川さんはどのように考え、行動されていたのでしょうか?
「スタッフを大事にする」ことを心がけていました。黒服としてアルバイトを始めた頃、辞めていったスタッフを数えたことがあるのですが、2年でなんと95名が離職していたのです。よいホステスに選ばれ、ずっとお店で活躍してもらうためには、働きやすい職場づくりが欠かせません。そのために、信頼できるスタッフが揃っていることは絶対条件です。そこでスタッフに対して「遊びの部分」を大切にしながら、ラフな雰囲気で接することを心がけています。お店の中だけでなく、仕事が終わったあとにラーメンを食べに行ったり、飲み会を開いたりして本音を引き出して打ち解ける機会も大事にしていますね。あと、誕生日は必ずお祝いをします。もちろん厳しさも必要ですが、その後にしっかりフォローするなど、些細な思いやりを大事にすることで徐々に「社員になりたい」というスタッフが増えてきました。
──これからの店舗運営や事業の拡大における、ビジョンをお聞かせください。
グループ全体で「繁盛店を多店舗展開し、知名度を上げていく」ことを目指している中で、さらにスタッフの採用・育成に精力を傾け、活躍する人材の輩出に努めるのが自分の役割だと考えています。今、店舗で「社員を20名に増やす」という目標を打ち立てています。まだ残念ながら達成はできていないので、常に改善しながら、組織としてより一層の高みを目指します。