大阪・ミナミの高級キャバクラ『Club ARROW(アロー)』。グループを代表するこの店舗で、代表を務める大野さんは、自衛隊員、タイでの日本語教師、そして15年に及ぶキャバクラ業界でのキャリアを経て現在のポジションに至った、多彩な経歴の持ち主です。今回はそんな大野さんにNo.2、No.3との絶妙な連携からなる組織づくりや、メンバーの育成についてお話を聞きました。
自衛隊で学んだ、規律と自由のバランス。
──カイザーグループに来られるまでのご経歴を教えてください。
出身は京都で、小学校4年生からは仙台で暮らしました。そして、24歳で自衛隊に入隊。きっかけは、自己犠牲を払いながらもPKO活動に奉仕する自衛隊員のドキュメンタリー本を読んだことです。当時、家庭をもっていた私は「家族を守ることと国を守ることは同義。私も行かなくては」と奮い立ちました。
自衛隊には2年間所属し、除隊後は、日本語教師の資格を取得し、半年間タイで日本語を教えました。海外での仕事にやりがいを感じたため、次はアメリカに行こうと決意し、資金を貯めるために入ったのがカイザーグループの前身である会社でした。正直に言うと、「時給が良い」という1点だけで、応募を決めました(笑)。
最初は単なるアルバイトのつもりでしたが、働いているうちに「人に教えることの面白さ」に気づきました。日本語教師と悩んだ末、結局31歳で江坂のキャバクラの店長としてキャリアをスタートさせましたね。
──自衛隊での経験は、現在の仕事にどのように活かされていますか?
自衛隊の経験から、組織の「規律」と「構造」への理解が深まりました。身近なところで言うと、時間厳守や自己管理の大切さです。体調管理とは体だけでなく、自分の感情をコントロールする能力も含みます。これらは店舗運営において、とても重要なスキルのひとつです。
スタッフ教育にも規律は必要です。キャバクラ業界は自由な雰囲気に見えるかもしれませんが、実は見えないところで組織的な規律を大切にしている業界です。お客様に対する接し方、店内でのルール、同僚との協力体制など、全てにおいて一定の規律が求められます。そういった規律を浸透させる場面でも、自衛隊での取り組みを意識しています。規律を守ることで得た信頼があるからこそ、自由に振る舞えるということを、ホステスやスタッフにはきちんと伝えるようにしています。
適材適所を見極める、すご腕マネジメント。
──『Club ARROW』の組織づくりについて教えてください。
私の両腕となって働いてくれているのが、No.2とNo.3スタッフの存在です。それぞれ異なる強みを持っていて、お店の運営に欠かせない人材です。
お店のNo.2スタッフは、ホステスのマネジメントが天才的に上手いんです。面白いことを言うのが上手な人気者なのですが、厳しさも兼ね備えていて、必要なときはしっかりと叱ることができます。接客指導も的確で「お客様にこう言われたらこう返す」とか「この状況ではこうするといい」など、具体的な指導ができます。その結果、しっかりと売上も上げられるんです。
No.3スタッフは、管理系の仕事が得意で、細かい報告や日々のルーティンワークをきちんとこなせる人材です。私がさまざまな仕事を振っても、それをしっかりとこなしてくれます。最初は私の秘書的な役割から始まって、徐々に難しい仕事を任せるようになりました。そうやって少しずつ育ててきたんです。
──人材育成について、大野さんのアプローチを教えてください。
まず、店舗運営において大切なのは、スタッフがしっかりしていることです。ホステスが頑張れる環境をつくるのが、スタッフの役割です。建築で例えると、建物が女性で、私たちスタッフは基礎。どんなに美しい建物も、基礎がしっかりしていないと倒れてしまいます。
黒服スタッフになりたいと応募してくれる人は、個性的だったりアウトサイダーと呼ばれるような人だったりすることも多々あります。私は、まずは可能性を信じて受け入れることを大切にしています。その後、私たちのカルチャーを少しずつ伝えながら、人それぞれ適性を見極めたうえで、その人の力を引き出していくんです。例えば、陽気で面白い人はホステスさんを和ませるマネジメント的な役割に向いているかもしれません。一方で、きちんと数字を管理できる人は、オペレーションで輝けるでしょう。多様な個性を組み合わせて、バランスの取れた組織を作ることを心がけています。
読書から得た知見で、自らを律する。
──読書がキャリアの転機になったと聞きました。
読書は、私の人生の節目ごとに、大きなきっかけとなってきました。自衛隊への入隊もそうですし、司馬遼太郎作品の、大義に向かって一心に生きる人物像にも、大きく影響を受けたと思います。今でも読書は好きで、特にリーダーシップに関する本は、この世界に入ってからよく読むようになりました。
なにより、読書は自分自身を点検するいい機会になります。私にもメンター的な存在はいますが、店内では私に何かを指摘する人はもういません。だからこそ、自分で自分をチェックしないといけない。本を読むことで、自分が間違っていないか、考え方がおかしくなっていないか、頭が固くなっていないかなどを確認しています。読書好きなスタッフ、特にNo.3の彼には、本をあげる機会も多いです。彼が、私が語ることを理解し共感してくれるのは、こういった読書を通じた交流があるからかもしれません。
──そんな大野さんが描く今後のビジョンについてお聞かせください。
この業界は若い方が活躍できる場所です。そして、グループとしてはまだまだ出店計画があります。15年あまりこの世界でやってきた私に期待されていることは、任されている店舗の売上を向上させながら、優秀な人材を輩出し、グループの新しい出店に貢献していくことでしょう。後進の育成は、私の人生においても重要なゴールです。自分の仕事の集大成として、しっかりと後進を育成していきたいですね。
──最後に、求職者の方へメッセージをお願いします。
まず伝えたいのは、この業界には本当にたくさんのチャンスがあるということです。年功序列ではないので、結果さえ残せば、どんな方でも役職をスピーディーに上げていくことができます。組織の成長スピードが速いので、そのぶんチャンスも多いです。
大きく稼ぎたいなら、人を動かせるようになることが重要です。ひとりで作れる金額には限界がありますが、人をマネジメントし、育てていく力があれば、大きな組織を作ることができます。そうすれば、より大きな金額を動かせるようになります。
ここでは、アルバイトでも多くの後輩を指導する機会があります。また、マネージャーとして自分の部署を持ち、売上を管理する経験も早い段階でできます。さらに、経営者としての考え方や判断基準も学べます。将来独立や起業を考えている方にとっても、非常に良い経験になるでしょう。